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『人虎伝』(3.5)原文・書き下し文・現代語訳

青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字

まとめはこちら『人虎伝』まとめ

 

傪且ヒテハク、「君今既異類。何クスル()。」

(さん)()()ひて()はく、(きみ)(いま)(すで)()(るい)()る。(なん)()(ひと)(げん)()くするか。」と。

 

傪はさらに尋ねて、「君は今すでに獣となっている。どうしてまだ人間の言葉を使えるのか。」と言った。

 

 

虎曰ハク、「我今形変ズルモ、而心悟ムル(のみ)

(とら)()はく、(われ)(いま)(かたち)(へん)ずるも、(こころ)()むるのみ。

 

虎が言うことには、「私は今姿は変わっているが、心ははっきりとしている。

 

 

()リテ()歳月多少

()()()りてより(さい)(げつ)()(しょう)()らず。

 

ここにいるようになってから、どのくらいの歳月が経過したのか分からない。

 

 

草木栄枯スルヲ(のみ)

()(そう)(もく)(えい)()するを()るのみ。

 

ただ、草や木が生い茂っては枯れるのを見てただけである。

 

 

近日絶エテ過客、久シクヱテ

(きん)(じつ)()えて()(かく)()く、(ひさ)しく()ゑて()(がた)し。

 

近ごろは旅人の通行も絶えて、長い間飢えていて耐え難かった。

 

 

不幸ニシテ-故人。慙惶殊ダシト。」

()(こう)にして()(じん)(とう)(とつ)す。(ざん)(こう)(こと)(はなは)だし。」と。

 

不幸にも旧友に不意につきあたってしまった。恥じて恐れるばかりだ。」と。



傪曰ハク「君久シク。食籃羊肉数斤

(さん)()はく、「(きみ)(ひさ)しく()う。(しょく)(らん)(なか)(よう)(にく)(すう)(きん)()り。

 

傪は、「君は長い間飢えている。食物を入れる竹のかごの中に羊の肉が数斤ある。

 

 

メテツテサンルヲ、可ナラン()。」

(とど)めて()つて(おく)るを()さん、()ならんか」と。

 

これを君に贈ろうと思うが、どうだろうか。」と言った。

 

 

ハク、「吾方()故人ヘバ(いま/ざ)ダ/ルアララフニ也。君去ルトキメヨト。」

()はく、「(われ)(まさ)()(じん)(きゅう)()へば、(いま)()らふに(いとま)あらざるなり。(きみ)()るとき(すなわ)(これ)(とど)めよ。」と。

※「(いま/ず) ~ (セ)」=再読文字、「未だ ~(せ)ず」、「まだ ~(し)ない」

(虎は、)「私はちょうど今、旧友と昔話をしているので、食う暇がない。君が去るときにそれを置いていってくれ。」と言った。

 

 

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『人虎伝』まとめ

 

 

 

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