フロンティア古典教室

宇治拾遺物語『絵仏師良秀』問題の解答(用言・単語など)

      2016/05/02

青字=解答」・「※赤字=注意書き、解説等

 問題はこちら宇治拾遺物語『絵仏師良秀』問題(用言・単語など)

 

これも今は昔、絵仏師良秀といふありけり。家の隣より火出で来て、風おしおほひてせめければ、逃げ出でて大路へ出でにけり。人の書かする仏もおはしけり。また衣ぬ妻子なども、さながら内にありけり。

 

それも知らず、ただ逃げ出でたるを事にして、向かひのつらに立てり。見れば、すでに我が家に移りて、煙、炎くゆりけるまで、おほかた向かひのつらに立ちて眺めければ、「あさましき事。」とて、人ども9.5とぶらひけれど、騒がず。「いかに。」と人いひければ、向かひに立ちて、家の焼くるを見て、うちうなづきて、時々笑ひけり。

 

「あはれ、つるせうとくかな。年ごろはわろく書きけるものかな。」といふ時に、とぶらひにたる者ども、「こはいかに、かくては立ち給へるぞ。あさましき事かな。物の()給へるか。」といひければ、「なんでふものの憑くべきぞ。年ごろ不動尊の火炎を悪しく書きけるなり。今見れば、かうこそ燃えけれと、心得つるなり。これこそせうとくよ。この道を立てて世にあらむには、仏だによく書き奉らば、百千の家も出でなむ。わたうたちこそ、させる能もおはせねば、物をも惜しみ給へ。」といひて、あざ笑ひてこそ立てりけれ。その後にや、良秀がよぢり不動とて、今に人々愛で合へり。

 

 

問題1.⑬せうとく、⑱なんでふ、を音読する場合にどのように読むかをひらがなで答えよ。

 

しょうとく

なんじょう

 

 

問題2.③おはす、⑤さながら、⑧おほかた、⑬せうとく、⑯あさまし、⑱なんでふ、⑲年ごろ、㉕わたう、㉖させる、㉚愛で合ふ、のここでの意味を答えよ。(※左記の用言は終止形で表記してある。終止形のものとして意味を考えよ。)

 

あおりになる・いらっしゃる・おられる

おはし=サ変動詞「おはす」の連用形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。仏(の絵)を敬っている

そのまま

さながら=副詞、そのまま、もとのまま。すべて、全部

だいたい・およそ

おほかた=副詞、だいたい、およそ。一般に

得をすること

所得(せうとく)=名詞、得をすること、うまくいくこと

驚きあきれる

あさましき=シク活用の形容詞「あさまし」の連体形、驚きあきれる、意外でびっくりすることだ

どうして

なんでふ=副詞、反語。どうして~か。(いや~ない。)

長年・長年の間

年ごろ=名詞、長年、長年の間

お前

わたう=名詞、(同等か目下の物に対して)おまえ、おまえら

これという・それほどの

させる=連体詞、これという、それほどの

褒め合う

愛で合へ=ハ行四段動詞「愛(め)で合ふ」の已然形、褒め合う

 

 

問題3.①あり、②出で来、③おはし、④着、⑥立て、⑦見れ、⑨立ち、9.5来、⑩焼くる、⑪笑ひ、⑫し、⑭来、⑮給へ、⑯あさましき、⑰給へ、⑳けれ、㉑心得、㉒立て、㉓奉ら、㉔来、㉗おはせ、㉘給へ、㉙けれ、㉚愛で合へ、の活用の種類と活用形をそれぞれ答えよ。ただし助動詞については活用形のみで良い。(解答例:㊿ハ行四段活用・連用形)

 

ラ行変格活用・連用形

あり=ラ変動詞「あり」の連用形。直後に接続が連用形の助動詞「けり」が来ているため連用形となっている。

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続(直前に置かれる活用形)は連用形

カ行変格活用・連用形

出で来(いでき)=カ変動詞「出で来(いでく)」の連用形

サ行変格活用・連用形

おはし=サ変動詞「おはす」の連用形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。仏(の絵)を敬っている

カ行上一段活用・未然形

着=カ行上一動詞「着る」の未然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」。直後に接続が未然形の助動詞「ぬ」が来ているため未然形となっている。

ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形

タ行四段活用・已然形

立て=タ行四段動詞「立つ」の已然形。「立つ」は下二段動詞でもあり、その時は「立たせる」と言う意味になる。直後に接続がサ変なら未然形・四段なら已然形の助動詞「り」が来ているため已然形となっている。

り=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

マ行上一段活用・已然形

見れ=マ行上一動詞「見る」の已然形。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」。直後に接続が未然形or已然形の接続助詞「ば」が来ているため已然形となっている。

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

タ行四段活用・連用形

立ち=タ行四段動詞「立つ」の連用形。「立つ」は下二段動詞でもあり、その時は「立たせる」というふうに使役の意味が付加される。

9.5 カ行変格活用・連用形

来(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形。直後に用言(とぶらひ)がきているため連用形(用言に連なる形)になっているので、「き」と読む

カ行下二段活用・連体形

焼くる=カ行下二段動詞「焼く」の連体形。直後に体言が省略されているため連体形となっている。

ハ行四段活用・連用形

サ行変格活用・連用形

し=サ変動詞「す」の連用形、する。直後に接続が連用形の助動詞「つる」が来ているため連用形となっている。

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

カ行変格活用・連用形

来(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形。直後に接続が連用形の助動詞「たる」が来ているため連用形となっている。

たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

ハ行四段活用・已然形

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。直後に接続がサ変なら未然形・四段なら已然形の助動詞「り」が来ているため已然形となっている。

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

シク活用・連体形

あさましき=シク活用の形容詞「あさまし」の連体形、驚きあきれる、意外でびっくりすることだ。直後に体言が来ているため連体形となっている。

ハ行四段活用・已然形

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の已然形、尊敬語。

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

已然形

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。ここの結びは「けれ」。係り結び。意味は強調なので気にせず「かう燃えけり」と元の形に戻して訳を考えると良い。

けれ=詠嘆の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形。「けり」は過去の意味で使われることがほとんどだが、①和歌での「けり」②会話文での「けり」③なりけりの「けり」では詠嘆に警戒する必要がある。①はほぼ必ず詠嘆だが、②③は文脈判断。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

ア行下二段活用・連用形

心得(こころえ)=ア行下二段動詞「心得(こころう)」の連用形。心得る、(事情などを)理解する。ア行下二段動詞は「得・心得・所得」だけのはずなので覚えておいた方がよい。

つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形

タ行下二段活用・連用形

立て=タ行下二段動詞「立つ」の連用形。下二段活用なので「立たせる・立てる」といった使役の意味が含まれている。

ラ行四段活用・未然形

奉ら=補助動詞ラ行四段「奉(たてまつ)る」未然形、謙譲語。~し申し上げる。直後に接続が未然形or已然形の接続助詞「ば」が来ているため未然形となっている。

ば=接続助詞、直前に未然形が来ているため④仮定条件「もし~ならば」。直前が已然形だと①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれか。直前が未然形なら④仮定条件「もし~ならば」である。

カ行変格活用・連用形

来(き)=カ変動詞「来(く)」の連用形。直後に接続が連用形の助動詞「な」が来ているため連用形となっている。

な=強意の助動詞「ぬ」の未然形、接続は連用形。「つ・ぬ」は「完了・強意」の二つの意味があるが、直後に推量系統の助動詞「む・べし・らむ・まし」などが来るときには「強意」の意味となる

サ行変格活用・未然形

おはせ=サ変動詞「おはす」の未然形、「あり・居り・行く・来」の尊敬語。いらっしゃる、おられる、あおりになる。

ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形

ハ行四段活用・已然形

こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。係り結び。

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形。尊敬語。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

已然形

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形。係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。係り結び。

ハ行四段活用・已然形

愛で合へ=ハ行四段動詞「愛(め)で合ふ」の已然形、褒め合う

り=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

 

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宇治拾遺物語『絵仏師良秀』まとめ

 

 

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