古文

源氏物語『若紫/北山の垣間見』解説・品詞分解(1)

(若紫との出会い)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 原文・現代語訳のみはこちら源氏物語『若紫/北山の垣間見』現代語訳(1)(2)

 

日もいと長きに、つれづれなれ 、夕暮れ いたうかすみたるに紛れて、

 

つれづれなれ=ナリ活用の形容動詞「つれづれなり」の已然形、何もすることがなく手持ちぶさたなさま、退屈なさま

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

いたう=ク活用の形容詞「いたし」の連用形が音便化したもの、良い意味でも悪い意味でも程度がはなはだしい、

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

日もたいそう長いのに、何もすることがなく退屈なので、(光源氏は)夕暮れでひどくかすんでいるのに紛れて、

 

 

かの ()柴垣(しばがき)のもとに立ち出でたまふ

 

彼の(かの)=あの、例の。「か/の」と品詞分解する

 

小柴垣=名詞、細い雑木の枝を編んで作った丈の低い垣根

 

たまふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

※尊敬語は動作の主体を敬う

※謙譲語は動作の対象を敬う

※丁寧語は言葉の受け手(聞き手・詠み手)を敬う。

どの敬語も、その敬語を実質的に使った人間からの敬意である。

 

例の小柴垣の所へお出かけになる。

 

 

人々は帰し給ひて、惟光(これみつの)朝臣(あそん)とのぞき給へ ただこの西(にし)(おもて)しも

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連用形、尊敬語。動作の主体(帰した人)である光源氏を敬っている。作者からの敬意。

給へ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の已然形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる

 

ただ=副詞、ちょうど、すぐに。

 

西面=名詞、西向きの部屋、西の方角

 

しも=強意の副助詞。訳す際にはあまり気にしなくてもよい。

 

(他のお供の)人々はお帰しになって、惟光の朝臣とおのぞきになると、すぐ(目の前の)西向きの部屋に、

 

 

()(ぶつ) () (たてまつ)て、行ふなり けり

 

持仏=名詞、身近に置いている仏像

 

据ゑ(すゑ)=ワ行下二段動詞「据う」の連用形。置く。ワ行下二段活用の動詞は「飢う(うう)」・「植う(うう)」・「据う(すう)」の3つしかないと思ってよいので、大学受験に向けて覚えておくとよい。

 

奉り=補助動詞ラ行四段「奉る」の連用形、謙譲語。動作の対象である持仏を敬っている。作者からの敬意。

 

行ふ=ハ行四段動詞「行ふ」の連体形。仏道修行をする、勤行(ごんぎょう)する

 

なり=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

けり=詠嘆の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。「けり」は過去の意味で使われることがほとんどだが、①和歌での「けり」②会話文での「けり」③なりけりの「けり」では詠嘆に警戒する必要がある。①はほぼ必ず詠嘆だが、②③は文脈判断

 

持仏をお据え申し上げて、勤行している(のは)尼であった。

 

 

(すだれ)少し上げて、花奉る めり

 

奉る=ラ行四段動詞「奉る」の連体形、謙譲語。差し上げる。動作の対象である持仏を敬っている。作者からの敬意。

 

めり=推定の助動詞「めり」の終止形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。視覚的なこと(見たこと)を根拠にする推定の助動詞である。

 

簾を少しまき上げて、花をお供えするようである。

 

 

中の柱に寄りて、脇息(きょうそく)の上に経を置きて、

 

中の柱=名詞、部屋の中央にある柱

 

ゐ=ワ行上一段動詞「居る(ゐる)」の連用形。すわる。とまる、とどまる。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

 

脇息=名詞、ひじ掛け

 

部屋の中央にある柱に寄りかかって座り、脇息の上にお経を置いて

 

 

いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人見え 

 

なやましげに=ナリ活用の形容動詞「なやましげなり」の連用形、だるそうである、気分が悪そうである

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形。

 

ただ人=名詞、一般の人、普通の身分の人

 

見え=ヤ行下二段動詞「見ゆ」の未然形。思われる、感じられる、見える、見られる。「ゆ」には「受身・自発・可能」の意味が含まれていたり、「見ゆ」には多くの意味がある。

 

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形。

 

たいそうだるそうに(お経を)読んでいる尼君は、普通の身分の人とは思えない。



 

四十(よそじ)あまりばかりて、いと白うあてに やせ たれ つらつきふくらかに、

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

あてに=ナリ活用の形容動詞「貴なり(あてなり)」の連用形。身分が高い、上品だ、高貴である

 

やせ=サ行下二段動詞「痩す(やす)」の連用形

 

たれ=存続の助動詞「たり」の已然形、接続は連用形。

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

つらつき(面付き)=名詞、顔つき

 

四十過ぎぐらいで、たいそう色白く上品にやせているけれど、顔つきはふっくらとしていて、

 

 

まみのほど、髪のうつくしげに そが  たる も、

 

目見(まみ)=名詞、目元、目つき

 

うつくしげに=ナリ活用の形容動詞「美しげなり」の連用形、かわいらしい様子である、美しい様子である

 

そが=ガ行四段動詞「削ぐ(そぐ)」の未然形。切り落とす、切りそろえる

 

れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。「る・らる」は受身・尊敬・自発・可能の四つの意味がある。

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

末=名詞、端、末端

 

目元のあたりや、髪の毛がきれいに切りそろえられている毛先も

 

 

なかなか長きよりもこよなう 今めかしきものかなと、あはれに給ふ

 

中中(なかなか)=副詞、かえって、むしろ

 

こよなう=ク活用の形容詞「こよなし」の連用形が音便化したもの、違いがはなはだしいこと、この上ない、この上なく違う。

 

今めかしき=シク活用の形容詞「今めかし」の連体形、現代風である

 

かな=詠嘆の終助詞、接続は体言・連体形

 

あはれに=ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形、「あはれ」は感動したときに思わず口から出る言葉「ああ・はれ」に由来するので、「心を動かされる」といったニュアンスで使う。文脈によって「美しい、悲しい、かわいそうである、不憫である」などと訳す。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語。動作の主体である光源氏を敬っている。作者からの敬意

 

かえって長い(髪)よりもこの上なく現代風なものだなあと、しみじみと(心を動かされて)御覧になる。

 

 

 続きはこちら源氏物語『若紫/北山の垣間見』解説・品詞分解(2)

源氏物語『若紫/北山の垣間見』(1)問題

源氏物語『若紫/北山の垣間見』まとめ

 

 

-古文

© 2024 フロンティア古典教室 Powered by AFFINGER5