古文

古今和歌集「むすぶ手の滴に濁る~」解説・品詞分解・現代語訳

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

作者:紀貫之(きのつらゆき)

 

むすぶ手の  (しずく)(にご)る  山の井の  あかでも人に  別れぬるかな

 

 

むすぶ=バ行四段動詞「掬ぶ(むすぶ)」の連体形、(水などを)手ですくう

 

山の井=山中で、湧き水をくむためにできた井戸

 

あか=カ行四段動詞「飽く(あく)」の未然形、満足する、飽き飽きする

 

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

 

も=強意の副助詞

 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

 

かな=詠嘆の終助詞

 

手ですくった水の滴で濁ってしまう山の井のように、満足できない思いであの人と別れてしまったなあ。

(+意訳):手ですくった水の滴で濁ってしまう山の井に満足できないのと同じように、そのような満足できない思いであの人と別れてしまったなあ。

 

※序詞…ある語句を導き出すために前置きとして述べることば

むすぶ手の滴に濁る山の井の(一句・二句・三句)=「あかでも」を導き出す序詞。序詞は前置きなので、作者の言いたいことは三句以降の部分である。たいてい序詞の最後は「~のように」と訳す。下記の②のパターンに当てはまる。

序詞を探すときのポイント(あくまで参考)。

①掛詞の直前 

例:春日野の/若紫の/すりごろも(ここまでが序詞)/しのぶの乱れ/かぎりしられず(しのぶ=掛詞、しのぶずりの「しのぶ」と恋い偲ぶ「偲ぶ」が掛けられている。)

②句の末尾が「の」 

例:あしびきの/山鳥の尾の/しだり尾の(ここまでが序詞)/ながながし夜を/ひとりかも寝む

③同じ言葉が繰り返して使われている部分 

例:多摩川に/さらす手作り(ここまでが序詞)/さらさらに/なにぞこの児(こ)の/ここだかなしき

 

 

 

『古今和歌集』まとめ

 

 

 

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