フロンティア古典教室

源氏物語『桐壺』解説・品詞分解(2)

      2016/11/20

(光源氏の誕生)

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 原文・現代語訳のみはこちら源氏物語『桐壺』現代語訳(2)

 

父の大納言は亡くなりて、母北の方 なむ いにしへの人  由ある て、

 

北の方=名詞、妻

 

なむ=強調の係助詞

 

いにしへの人=昔気質の人

 

の=格助詞、用法は同格。「で」に置き換えて訳すと良い。「昔気質の人由緒正しい家柄の人であって、」

 

由(よし)ある=①由緒正しい家柄の②教養のある、③趣がある、ここでの意味は①か②微妙なところ。直後に「人」が省略されているので連体形となっている。「由(名詞)/ある(ラ変動詞の連体形)」

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

父の大納言は亡くなって、(桐壷の更衣の)母である大納言の北の方は、昔気質の人で教養のある人であって、

 

 

うち具し、さしあたりて世のおぼえ 華やかなる御かたがたにもいたう劣らず、何事の儀式をももてなし 給ひ けれど、

 

うち具し=サ変動詞「うち具す(ぐす)」の連用形、備わる、そろう、従う、備える、「うち」の部分は接頭語であり訳す際にはあまり気にしなくてもよい

 

世のおぼえ=世間の評判、「世/の/おぼえ」

 

華やかなる=ナリ活用の形容動詞「華やかなり(はなやかなり)」の連体形、はなやかである、栄えている、きわだっている

 

いたう=ク活用の形容詞「いたし」の連用形が音便化したもの、良い意味でも悪い意味でも程度がはなはだしい

 

もてなし=サ行四段動詞「もてなす」の連用形、取り扱う、処置する。ふるまう。饗応する。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体(儀式の支度を整えた人)である桐壷の母を敬っている。作者からの敬意。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

両親がそろっており、現在世間の評判も華やかである他の(女御・更衣の)方々に比べてもあまり劣ることなく、どんな儀式をも、とり行いなさったけれども、

 

 

とりたててはかばかしき 後見  なけれ 

 

はかばかしき=シク活用の形容詞「捗々し(はかばかし)」の連体形、思うように物事がはかどる様子、頼もしい、しっかりしている。きわだっている。

 

後見(うしろみ)=世話をする人、後見人。当時は社会的に実力のある父や兄などの男性が「後見」になるが、桐壷には母が後見となっている。なので、宮廷での立場が弱い。

 

し=強調の副助詞、強調の意味なので訳す際には気にしなくて良い。だから、「後見しない」ということではなく「後見無し」というような意味なので注意。

 

なけれ=ク活用の形容詞「無し」の已然形、ここの「けれ」は助動詞ではなく形容詞「なし」の已然形の一部であることに注意。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

特に取り上げて頼れる後見人(=後ろ盾)がいないので、

 

 

事ある時は、なほ 拠り所なく 心細げなり

 

なほ=副詞、やはり。さらに。それでもやはり。

 

拠り所(よりどころ)=頼る所

 

心細げなり=ナリ活用の形容動詞「心細げなり」終止形、心細い、頼りなくて不安だ

 

重大な用事がある時は、やはり頼る所がなく心細そうである。

 

 

前の世にも、御契り 深かりけむ

 

前(さき)の世=前世

 

御契り(ちぎり)=名詞、約束、ご縁

 

や=疑問の係助詞。結びは連体形となる。係り結び。

 

けむ=過去推量の助動詞「けむ」の連体形、接続は連用形。係助詞「や」を受けて連体形になっている。文末に来ると「過去推量・過去の原因推量」だが、文中に来ると「過去の伝聞・婉曲」となることをもとに識別する。

 

前世においても(帝と更衣は)ご縁が深かったのだろうか、

 

 

世になく 清らなる玉の(おのこ)御子(みこ)さへ生まれ給ひ 

 

世になく=世に比類がない、またとない。「世/に/なく」

 

清らなる=ナリ活用の形容動詞「清らなり」の連体形、美しい、気品があって美しい。

 

さへ=副助詞、添加(~までも)。類推(~さえ)。

 

給ひ=補助動詞ハ行四段「給ふ(たまふ)」の連用形、尊敬語。動作の主体(生まれた人)である皇子(光源氏)を敬っている。作者からの敬意。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

世に比類がないほど美しい玉のような皇子までもがお生まれになった。

 

 

いつしか心もとながら  給ひて、急ぎ参ら て 御覽ずるに、

 

いつしか=副詞、①いつ…か②いつのまにか③はやく…(したい)、ここでは③の意味

 

心もとながら=ラ行四段動詞「心もとながる」の未然形、待ち遠しく思う、じれったく思う

 

せ=尊敬の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」は直後に尊敬語が来ていないときは「使役」だが、尊敬語が来ているときは文脈判断。「給ひ」と合わせて二重敬語となっており、動作の主体(待ち遠しく思っている人)である帝を敬っている。作者からの敬意

 

参ら=ラ行四段動詞「参る」の未然形、謙譲語。動作の対象(参られた人)である帝を敬っている。

 

せ=使役の助動詞「す」の連用形、接続は未然形。「す・さす・しむ」には、「使役と尊敬」の二つの意味があるが、直後に尊敬語が来ていない場合は必ず「使役」の意味である。

 

御覧ずる=サ変動詞「御覧ず(ごらんず)」の連体形、御覧になる。動作の主体である帝を敬っている。作者からの敬意。

 

(帝は)早く(生まれた皇子を見たい)とじれったく思いなさって、急いで(その皇子を宮中の自分のもとへ)参らせて御覧になると、

 

 

珍らかなる(ちご)御かたち なり

 

珍らかなる=ナリ活用の形容動詞「珍らかなり(めづらかなり)」の連体形、珍しい、普通とは違う

 

御かたち=名詞、顔立ち、姿、容貌

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形、接続は体言・連体形

 

珍しいほどすばらしい皇子のご容貌である。

 

 

一の御子は、右大臣の女御御腹 て、よせおもく、

 

一の御子=桐壷帝の第一皇子、弘徽殿の女御の子、のちの朱雀院

 

右大臣の女御=右大臣家出身の女御、弘徽殿の女御のこと、桐壷の更衣と違って後見がしっかりしている。

 

御腹=名詞、その女性の腹から生まれた子

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

よせ=名詞、信望、人望。後見のない人物に対してはよせが軽いという

 

第一皇子は、右大臣の娘(=弘徽殿の女御)がお生みになったお方で、世間の信望も厚く、

 

 

疑ひなき儲の君と世にもてかしづき 聞こゆれ 

 

儲の君(もうけのきみ)=名詞、皇太子。儲け=設けること、準備のことであり、次期皇位の予定者ということである

 

もてかしづき=カ行四段動詞「もてかしづく」の連用形、「もて」は接頭語なので気にする必要はない

かしづく=カ行四段動詞、大切にする、大切に養い育てる、大切にお世話する

 

聞こゆれ=補助動詞ヤ行下二「聞こゆ」の已然形、謙譲語。動作の対象(大切にされている人)である第一御子のことを敬っている。作者からの敬意。

 

ど=逆接の接続助詞、活用語の已然形につく。

 

疑いもなく皇太子(=次期天皇候補)だと世間では大切にし申し上げているけれども、

 

 

この御にほひには、並び給ふ べくもあらざり けれ 

 

御にほひ=名詞、色が美しく映えること、艶のある美しさ。嗅覚ではなく視覚的なことを意味しているので注意。

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の終止形、尊敬語。動作の主体である第一皇子を敬っている。作者からの敬意。

 

べく=可能の助動詞「べし」の連用形、接続は終止形。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

ざり=打消の助動詞「ず」の連用形、接続は未然形

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

この(光源氏)のお美しさにはお並びになれそうにはなかったので、

 

 

おほかたやんごとなき御思ひて、この君をば、私物(わたくしもの)思ほし かしづき 給ふこと限りなし

 

おほかた=副詞、一般に、およそ、ひととおりに

 

やんごとなき=ク活用の形容詞「やんごとなし」の連体形、捨ててはおけない、貴重だ、格別だ

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

私物=名詞、私有物として大切にするもの、内々で大事にするもの

 

思ほし=サ行四段動詞「思ほす(おぼほす)」の連用形。「思ふ」の尊敬語。お思いになる。動作の主体である帝を敬っている。作者からの敬意。

 

かしづき=カ行四段動詞「かしづく」の連用形、大切にする、大切に養い育てる、大切にお世話する

 

給ふ=補助動詞ハ行四段「給ふ」の連体形、尊敬語。動作の主体である帝を敬っている。作者からの敬意。

 

限りなし=ク活用の形容詞「限りなし」の終止形、果てしがない、この上もない、甚だしい

 

(帝は、)(第一皇子に対しては)一通りの大切になさるという程度のご寵愛であって、この弟君(=光源氏)をご秘蔵の宝物のようにお思い大切になさることはこの上もない。

 

【登場人物】

桐壷帝(帝)

桐壷の更衣

桐壷の更衣の父である大納言

その大納言の北の方(=その大納言の妻=桐壷の更衣の母)

清らなる玉の男御子・この君(=光源氏)

右大臣の女御(=弘徽殿の女御)

右大臣の女御の御腹・一の御子(=第一皇子=朱雀院=光源氏の腹違いの兄)

 

 

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源氏物語『桐壺』(2)問題

 

源氏物語『桐壺』まとめ

 

 

 

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