フロンティア古典教室

奥の細道『平泉』解説・品詞分解

   

「黒=原文」・「赤=解説」・「青=現代語訳

 原文・現代語訳のみはこちら奥の細道『平泉』現代語訳

 

三代の栄耀(えいよう)一睡(いっすい)のうちして、大門の(あと)は一里こなたにあり

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

こなた(此方)=名詞、こちら

 

あり=ラ変動詞「あり」の終止形

 

藤原氏三代の栄華も一眠りの夢のように短くはかないことで、大門の跡は一里ほどこちらの方(=手前)にある。

 

 

秀衡(ひでひら)が跡は田野(でんや)なりて、(きん)鶏山(けいざん)のみ形を残す。

 

なり=ラ行四段動詞「成る」の連用形

 

秀衡の館の跡は田や野原になっていて、金鶏山だけが昔の形を残している。

 

 

まづ高館(たかだち)にのぼれ北上川(きたかみがわ)南部より 流るる大河なり

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして②の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや

 

流るる=ラ行下二段動詞「流る」の連体形

 

なり=断定の助動詞「なり」の終止形。接続は体言・連体形

 

まず(義経が住んでいた)高館に登ると、北上川(が見えるが、この川は)は南部地方から流れている大河である。

 

 

(ころも)(がわ)和泉(いずみ)(じょう)(めぐ)て、高館の下にて大河に落ち入る。

 

衣川は和泉が城を回って流れて、高館の下で大河(=北上川)に流れ込んでいる。

 

 

泰衡(やすひら)旧跡(きゅうせき)は、(ころも)(せき)(へだ)てて、南部口をさし固め、(えぞ)を防ぐと見え たり

 

見え=ヤ行下二段動詞「見ゆ」の連用形。見える、分かる。「ゆ」には「受身・自発・可能」の意味が含まれていたり、「見ゆ」には多くの意味がある。

 

たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形

 

泰衡らの古い館の跡は、衣が関を間にはさんで、南部地方との出入り口を固く守り、夷の侵入を防いだように見える。

 

 

さても()(しん)すぐつてこの城にこもり、巧名(こうみょう)一時(いちじ)(くさむら)なる

 

さても=副詞、そういう状態でも、それにしても、そのままでも、そうであっても

 

なる=ラ行四段動詞「成る」の終止形

 

それにしても、(義経は)忠義な家来をえりすぐってこの城にたてこもり(戦ったが)、その功名も一時のもので、その場所も今となっては草むらとなっている。

 

 

「国破れて山河あり、城春して草青み たり。」と、

 

破れ=ラ行下二段動詞「破る」の連用形

 

あり=ラ変動詞「あり」の連用形

 

に=断定の助動詞「なり」の連用形、接続は体言・連体形

 

青み=マ行四段動詞「青む」の連用形

 

たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形

 

「国は破れ滅んでも山河はそのまま残っており、(荒廃した)城に春がきて、辺りの草は青々と(しげ)っている。」と(いう漢詩を思い出して)、

 

 

(かさ)うち()て、時の移るまで涙を落とし侍り 

 

うち敷き=カ行四段動詞「うち敷く」の連用形。「うち」は接頭語、「ちょっと・すこし」などの意味があるが、あまり気にしなくてもよい。

 

侍り=補助動詞ラ変「侍り(はべり)」の連用形、丁寧語。

※「候ふ(さぶらふ)・侍り(はべり)」は補助動詞だと丁寧語「~です、~ます」の意味であるが、本動詞だと、丁寧語「あります、ございます、おります」と謙譲語「お仕え申し上げる、お控え申し上げる」の二つ意味がある。

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形

 

笠を地面に置いて、長い間(昔のことに思いを馳せて)涙を落としたことでした。

 

 

 

夏草や  (つわもの)どもが  夢の跡

 

夏草=季語、夏

 

や=間投助詞

 

一面に青々と夏草が茂っていることだよ。ここ高館で戦った義経らの姿が浮かぶようだ。しかし、それも一時の夢のようにはかなく消えてしまった。

 

 

()の花に  兼房(かねふさ)見ゆる  (しら)()かな      ()()

 

卯の花=季語、夏

 

見ゆる=ヤ行下二段動詞「見ゆ」の連体形

 

かな=詠嘆の終助詞

 

白い卯の花を見ていると、白髪を振り乱して戦っていた兼房の姿が目に浮かぶようだ。     曾良

 

 

かねて耳驚かし たる二堂開帳す

 

驚かし=サ行四段動詞「驚かす」の連用形

 

たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形

 

開帳す=サ変動詞「開帳す」の終止形。「名詞+す(サ変動詞)」で一つのサ変動詞になるものがいくらかある。例:「音す」、「愛す」、「心す」、「御覧ず」

 

以前から話に聞いて驚いていた二堂が開帳されている。

 

 

経堂は三将の像を残し、光堂は三代の(ひつぎ)納め、三尊の仏を(あん)()

 

納め=マ行下二段動詞「納む(おさむ)」の連用形

 

安置す=サ変動詞「安置す」の終止形。「名詞+す(サ変動詞)」で一つのサ変動詞になるものがいくらかある。例:「音す」、「愛す」、「心す」、「御覧ず」

 

経堂は藤原氏三代の将軍(=清衡(きよひら)基衡(もとひら)秀衡(ひでひら)の像を残しており、光堂はその三代の棺を納め、三尊の仏像を安置している。

 

 

七宝(しっぽう)散り失せて、(たま)(とびら)風に破れ、(こがね)の柱霜雪(そうせつ)()て、すでに頽廃(たいはい)空虚(くうきょ)(くさむら)なる べきを、

 

なる=ラ行四段動詞「成る」の終止形

 

べき=当然の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある。

 

七宝はなくなっていて、珠玉を散りばめた扉は風で破れ、金の柱は霜や雪のせいで朽ちて、すっかり荒れ果てて空しい草むらになるはずだったところを、

 

 

四面(あら)に囲みて、(いらか)(おお)ひて風雨をしのぐ。しばらく(せん)(ざい)記念(かたみ)とはなれ 

 

なれ=ラ行四段動詞「成る」の已然形

 

り=存続の助動詞「り」の終止形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

(光堂の)四面を新たに囲み、瓦を屋根に覆って風雨をしのいでいる。しばらくの間は遠い昔をしのぶ記念物となったのである。

 

 

五月雨(さみだれ)の  降り残してや  光堂(ひかりどう)

 

五月雨=季語、夏

 

や=疑問の係助詞

 

五月雨も、この光堂だけは降り残したのだろうか。(雨で朽ちることなく)今も光り輝いている光堂であるよ。

 

 

 

 

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