フロンティア古典教室

『鶏鳴狗盗』原文・書き下し文・現代語訳

      2015/11/14

青=現代語訳・下小文字=返り点・上小文字=送り仮名・解説=赤字

鶏鳴狗盗(けいめいくとう)小策を弄する人のたとえ。つまらないことでも何かの役に立つというたとえ。

 

 

靖郭君田嬰ナル、斉宣王()庶弟(なり)。封ゼラル於薛。有子曰

(せい)(くわく)田嬰(でんえい)は、(せい)(せん)(おう)(しょ)(てい)なり。(せつ)(ほう)ぜらる。子有り(ぶん)()ふ。

 

靖郭君田嬰は、斉の宣王の異母弟である。薛に領地を与えられた。(田嬰には)子どもがいて、名を文といった。

 

 

食客数千人。名声聞コユ於諸侯。号シテ孟嘗君

食客(しょくかく)数千人。名声諸侯に聞こゆ。号して孟嘗(もうしょう)(くん)()す。

※食客=客人として抱えている家来

(文は)食客を数千人抱えていた。その名声は諸侯に知られていた。(文は)孟嘗君と称した。

 

 

昭王、聞ナルヲ、乃レテ於斉、以ツテエンコトヲ

(しん)(しょう)(おう)()の賢なるを聞き、(すなは)()づ質を斉に()れて、()つて(まみ)えんことを求む。

 

秦の昭王は、孟嘗君が賢明であることを聞き、そこでまず先に人質を斉に送り入れて、そうして会見を求めた。

※秦の国から人質を斉に送り込むことで、孟嘗君の安全を保障しようとした。人の命を担保に孟嘗君との会見を求めたということ。

 

 

レバ。囚ヘテサント

(いた)れば(すなは)(とど)め、(とら)へて(これ)を殺さんと欲す。

 

(孟嘗君が秦に)到着すると引き止め、捕えて孟嘗君を殺そうとした。

 

 

孟嘗君使()ヲシテリテ昭王幸姫上レカンコトヲ

孟嘗君人をして昭王の幸姫に(いた)りて()かんことを求めしむ。

※使=使役「使ヲシテ(セ)」→「AをしてB(せ)しむ」→「AにBさせる」

孟嘗君は使いの者を昭王に寵愛(ちょうあい)されている女性のもとに送り、解放するよう頼ませた。

 

 

姫曰ハク、「願ハクハント狐白裘。」

姫曰はく、「願はくは君の狐白裘(こはくきゅう)を得ん。」と。

※「願ハクハ ~(セ)ン」=願望、「どうか ~させてください/どうか ~してください」

その女性は、「どうかあなた(=孟嘗君)のキツネのわきの下の白い毛で作った皮衣をください。」と言った。

 

 

孟嘗君、嘗ツテ昭王、無矣。

(けだ)し孟嘗君、(かつ)()て昭王に献じ、他の(きゅう)無し。

 

実は孟嘗君は、以前に昭王に献上しており、他の皮衣がなかった。

 

 

狗盗

客に()狗盗(くとう)()す者有り。

 

食客の中にこそどろの上手な者がいた。

 

 

蔵中、取リテツテ。姫為ヒテタリサルルヲ

(しん)の蔵中に入り、(きゅう)を取りて姫に(けん)ず。姫(ため)に言ひて(ゆる)さるるを得たり。

 

秦の蔵の中に入って、皮衣を盗み出して、姫に献上した。姫が孟嘗君のために説得して、釈放されることができた。

 

 

、変ジテ姓名、夜半函谷関

(すなは)()()り、姓名を変じて、夜半に(かん)谷関(こくかん)(いた)る。

 

すぐに馬を走らせて逃げ去り、姓名を変えて、夜中に函谷関に到着した。

 

 

法、鶏鳴キテダス

関の法、鶏鳴きて(まさ)に客を()だす。

 

関所の法では、鶏が鳴いて初めて旅人を出すということになっていた。

 

 

秦王イテ一レハンコトヲ

秦王の後に()いて(これ)を追はんことを恐る。

 

秦王が後で(釈放したことを)後悔して孟嘗君を追うことを恐れた。

 

 

鶏鳴

客に()く鶏鳴を()す者有り。

 

食客の中に鶏の鳴きまねを得意とする者がいた。

 

 

鶏尽。遂

(ことごと)く鳴く。(つひ)に伝を発す。

(つひ)=そのまま、こうして、とうとう

鶏はすべて鳴き出した。そのまま通行を許可した。

 

 

デテ食頃ニシテ、追者果タシテルモ、而()

出でて食頃にして、追ふ者果たして至るも(およ)ばず。

※食頃=食事をとるほどのわずかな時間

関所を出てわずかな時間で、追ってがやって来たけれども、間に合わなかった。

 

 

孟嘗君帰リテ、与韓・魏チテ、入函谷関。秦割キテツテ

孟嘗君帰りて秦を(うら)み、(かん)()(これ)()ちて、函谷関に入る。秦城を()きて()()す。

※城=城壁で囲まれた町

孟嘗君は、自国に帰って秦を怨み、韓・魏と一緒に秦を攻撃して、函谷関に攻め込んだ。秦は町を割譲して和睦した。

 

 

 

 

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