フロンティア古典教室

伊勢物語『東下り』解説・品詞分解(1)

      2015/10/21

 原文・現代語訳のみはこちら伊勢物語『東下り』現代語訳(1)(2)(3)

 

 

むかし、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、「京にはあら。あづまの方に住むべき求めに。」とてゆきけり

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

えうなき=ク活用の形容詞「要(えう)なし」の連体形、必要がない、役に立たない

 

思ひなし=サ行四段動詞「思ひなす」の連用形、思い込む、考えて~だと決める

 

じ=打消意志の助動詞「じ」の終止形、接続は未然形

 

べき=適当の助動詞「べし」の連体形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。「べし」は㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある

 

もとめ=マ行下二動詞「求む」の連用形、探す、欲しいと願う、買う

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

昔、ある男がいた。その男は、自分を役に立たないものと思い込んで、「京にはおるまい。東国のほうに住みのによい国を探しに(行こう)。」と思って出かけた。

 

 

もとより友とする人、ひとりふたりしていきけり。道知れ 人もなくて、まどひいきけり

 

して=格助詞、①共同「~とともに」、②手段・方法「~で」、③使役の対象「~に命じて」の三つの意味があるが、ここでは①共同「~とともに」の意味。

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

知れ=ラ行四段動詞「知る」の已然形。直後に完了・存続の助動詞「り」が来ているため、已然形となっている

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続(直前に来る活用形)はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

以前から友人としている人、一人二人とともに行った。道を知っている人もいなくて、迷いながら行った。

 

 

三河の国八橋といふ所にいたり 

 

いたり=ラ行四段動詞「至る」の連用形

 

ぬ=完了の助動詞「ぬ」の終止形、接続は連用形。直前に連用形の「いたり」が来ているため、完了・強意の助動詞「ぬ」だと分かる。打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」ではない。打消しの助動詞「ず」の接続は未然形だからである。また、文末で終止形と予測して活用から判断してもよい。ただし、文末は係り結びによって連体形となることもあるので注意。

 

三河の国、八つ橋という所に到着した。

 

 

そこを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手(くもで) なれ 、橋を八つ渡せ によりてなむ、八橋といひける

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形

 

蜘蛛手(くもで)=クモが手足を伸ばしている様子に例えて、八方に水が分流している様子を表している。

 

なれ=断定の助動詞「なり」の已然形、接続は体言・連体形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

渡せ=サ行四段動詞「渡す」の已然形

 

る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

なむ=強調の係助詞、結び(文末)は連体形となる。係り結びとなる係助詞は「ぞ・なむ・や・か・こそ」とあるが、結びが連体形となるのは「ぞ・なむ・や・か」であり、「こそ」の結びは已然形となる。「ぞ・なむ・こそ」は強調の意味である時がほとんどで、訳す際には気にせず普通の文として訳せば良い。

 

ける=過去の助動詞「けり」の連体形、接続は連用形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。係り結び

 

そこを八橋と言ったのは、水の流れる川がクモの足のように八方に流れているので、(それらの八つの流れに)橋を八つ渡してあることから、八橋と言うのだった。

 

 

その沢のほとりの木の陰におりて、乾飯(かれいひ)食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり

 

ゐ=ワ行上一動詞「居(ゐ)る」の連用形。すわる。とまる、とどまる。上一段活用の動詞は「{ ひ・い・き・に・み・ゐ } る」と覚える。

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形。

 

おもしろく=ク活用の形容詞「面白し」の連用形、趣き深い、美しい。興味深い

 

たり=存続の助動詞「たり」の終止形、接続は連用形

 

その沢のほとりの木の陰に(馬から)降りて座って、乾飯を食べた。その沢にかきつばたの花がとても美しく咲いていた。

 

 

それを見て、ある人のいはく、「かきつばた、といふ五文字(いつもじ)を句の上(かみ)に据(す)ゑて、旅の心を詠め。」といひけれ 、よめ

 

据(す)ゑ=ワ行下二段活用の動詞「据う」の連用形。置く。ワ行下二段の動詞は「植う(うう)」「飢う(うう)」「据う(すう)」の3つのみなので、覚えた方がよい。

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形。

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

る=完了の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形。直後に体言である「歌」が省略されているため、文末にもかかわらず連体形(体言に連なる形)となっている。「詠める(歌)。」

 

それを見て、ある人の言うことには、「かきつばた、という五文字を各句の上に置いて、旅の心を詠みなさい。」と言ったので、(男が)詠んだ歌。

 

 

 

らごろも(唐衣)

つつなれにし

ましあれば

るばるきぬる

びをしぞ思ふ

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形

 

し=「つまし」と「たびをしぞ」の「し」は強意の副助詞

 

ば=接続助詞、直前が已然形であり、①原因・理由「~なので、~から」の意味で用いられている。

 

ぬる=完了の助動詞「ぬ」の連体形、接続は連用形

 

ぞ=強調の係助詞、結びは連体形となる。係り結び

 

思ふ=ハ行四段動詞の連体形。係助詞「ぞ」を受けて連体形となっている

 

 

※枕詞…特定の語の上にかかって修飾したり、口調を整えるのに用いることば。5文字以下で、それ自体に意味がほとんどないなどという点で序詞とは大きく異なる。

唐衣=枕詞、「着る」の他に「裾」「裁つ」などに掛かる。

 

※序詞…ある語句を導き出すために前置きとして述べることば

唐衣きつつ=「なれ」を導き出す序詞。序詞は前置きなので、作者の言いたいことは三句以降の部分である。たいてい序詞の最後は「~のように」と訳す。

 

※掛詞…同音異義を利用して、一つの語に二つ以上の意味を持たせたもの。読者に意味を一つに限定されない配慮としてひらがなとして書かれることが多い。

なれ=「萎れ」と「馴れ」が掛けられている

つま=「妻」と(着物の)「褄」が掛けられている。

はるばるの「はる」=「はるか遠く」と「(布を)張る」という意味が掛けられている。

 

※縁語…ある言葉と意味上の縁のある言葉。ある言葉から連想できる言葉が縁語。

この和歌では、「衣」の縁語として「着(き)」「馴れ(なれ)」「褄(つま)」「張る」の4つである。

 

唐衣を着続けて体になじむように、馴れ親しんだ妻が(都の京に)いるので、はるばるとやって来た旅をしみじみと思うことだ

 

 

 

と詠め けれ 、みな人、乾飯の上に涙落としてほとび  けり

 

り=完了の助動詞「り」の連用形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形

 

けれ=過去の助動詞「けり」の已然形、接続は連用形

 

ば=接続助詞、直前が已然形だから①原因・理由「~なので、~から」②偶然条件「~ところ・~と」③恒常条件「(~する)といつも」のどれかであるが、文脈判断をして①の意味でとる。ちなみに、直前が未然形ならば④仮定条件「もし~ならば」である。

 

ほとび=バ行上二動詞「潤(ほと)ぶ」の連用形、水分を含んでふやける

 

に=完了の助動詞「ぬ」の連用形、接続は連用形

 

けり=過去の助動詞「けり」の終止形、接続は連用形

 

と詠んだので、(その場にいた)みんなは、乾飯の上に涙を落として(乾飯が)ふやけてしまった。

 

 

 続きはこちら伊勢物語『東下り』解説・品詞分解(2)

 

問題はこちら伊勢物語『東下り』(1)問題

 

  伊勢物語『東下り』まとめ

 

 

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