フロンティア古典教室

玉勝間『師の説になづまざること』(1)問題の解答

      2016/04/29

「青字=解答」「※赤字=注意書き、解説等」

問題はこちら玉勝間『師の説になづまざること』(1)問題

 

 

おのれ古典を説くに、師の説と違へること多く、師の説のわろきことあるをば、わきまへ言ふことも多かるを、いとあるまじきことと思ふ人多かめれど、これすなはちわが師の心にて、常に教へられしは、「のちによき考えの出で来たらんには、必ずしも師の説にたがふとて、なはばかりそ。」となむ、教へられし。こはいと尊き教へにて、我が師の、よにすぐれ給へる一つなり。

 

 おほかた、いにしへを考ふること、さらに一人二人の力もて、ことごとくあきらめ尽くすべくもあらず。また、よき人の説ならむからに、多くの中には、誤りなどかなからむ必ずわろきこともまじらではえあらず。そのおのが心には、「今はいにしへの心ことごとく明らかなり。これをおきては、あるべくもあらず。」と思ひ定めたることも、思ひのほかに、また人のことなるよき考への出で来るわざなり。

 

あまたの手を経るまにまに、先々の考えの上を、なほよく考へ究むるからに、次々に詳しくなりもてゆくわざなれば、師の説なりとて、必ずなづみ守るべきにもあらず。よきあしきを言はず、ひたぶるに古きを守るは、学問の道には言ふかひなきわざなり

 

 また、おのが師などのわろきことを言ひ表すは、いともかしこくはあれど、それも言はざれば、世の学者その説に惑ひて、長くよきを知る期(ご)なし。師の説なりとて、わろきを知りながら、言はず、つつみ隠して、よざまにつくろひをらは、ただ師のみを尊みて、道をば思はざるなり

 

 

問題1.⑩なりもてゆく、⑪なづみ、⑫ひたぶるに、⑭かしこく、のここでの意味を答えよ。

 

なっていく

もてゆく=カ行四段動詞「もてゆく」の終止形、しだいに~してゆく。「もて」は接頭語で、あまり意味はない。

こだわり

なづみ=マ行四段動詞「泥む/阻む(なづむ)」の連用形、こだわる、気にする。行き悩む。悩み苦しむ。思いこがれる

ひたすらに・一途に

ひたぶるに=副詞、ひたすら、一途に、むやみに。全く、全然。

恐れ多く

かしこく=ク活用の形容詞「畏し/賢し(かしこし)」の連用形。恐れ多い、尊い。もったいない、かたじけない。賢い、優れている。

 

 

問題2.「⑮む」の助動詞の文法的意味として、「ア~エ」の記号から適当なものを一つ選んで答えよ。

ア.推量  イ.意志  ウ.勧誘  エ.婉曲

 

エ.婉曲

む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。ここでは仮定の意味だと解する説もある。

 

 

問題3.①多かめれ、②出で来たらん、④教へられし、を例にならって品詞分解し、説明せよ。また「⑪さうざうしげなめり」の現代語訳も答えよ。

例:「い は/れ/ず。」

いは=動詞・四段・未然形

れ=助動詞・受身・未然形

ず=助動詞・打消・終止形

 

①品詞分解:「多 か/め れ

多か=形容詞・ク活用・連体形

めれ=助動詞・婉曲・已然形

多か=ク活用の形容詞「多し」の連体形が音便化して無表記化されたもの。「多かる」→「多かん」→「多か」

めれ=推定の助動詞「めり」の已然形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。ここは「婉曲(断定せず遠まわしに表現すること)」の意味でも良いかもしれない。

 

②品詞分解:「出 で 来/た ら/ん

出で来=動詞・カ変・連用形

たら=助動詞・完了・未然形

ん=助動詞・仮定・連体形

出で来(き)=カ変動詞「出で来(く)」の連用形

たら=完了の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形

ん=仮定の助動詞「む」の連体形が音便化したもの。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどちらかである。訳:「(もし)出てきたら、そのような場合には」

 

④品詞分解:「教 へ/ら れ/し

教へ=動詞・下二・未然形

られ=助動詞・尊敬・連用形

し=助動詞・過去・連体形

られ=尊敬の助動詞「らる」の連用形、接続は未然形。

し=過去の助動詞「き」の連体形、接続は連用形。係助詞「なむ」を受けて連体形となっている。

 

 

問題4.「⑯道をば思はざるなり」の「道」とは何の道であるかを明らかにして、現代語訳せよ。

 

学問の道を(大切に)思わないのである

ば=強調の係助詞。強調する意味があるが、訳す際に無視しても構わない。

 

 

問題5.「③なはばかりそ」、「⑤さらに一人二人の力もて、ことごとくあきらめ尽くすべくもあらず」、「⑥よき人の説ならむからに」、「⑦誤りなどかなからむ」、「⑧必ずわろきこともまじらではえあらず」、「⑨あまたの手を経るまにまに」、「⑬言ふかひなきわざなり」の現代語訳を答えよ。

 

遠慮してはならない

な=副詞、そ=終助詞

「な~そ」で「~するな(禁止)」を表す。

はばかり=ラ行四段動詞「憚る(はばかる)」の連用形、遠慮する、気兼ねする。障害があっていき悩む、進めないでいる

 

決して一人や二人の力で、すべて明らかにしつくすことはできない

さらに=下に打消し語を伴って、「まったく~ない、決して~ない」。ここでは「ず」が打消語

あきらめ=マ行下二段動詞「明らむ」の連用形、はっきりさせる、明らかにする。晴れ晴れとさせる。

べく=可能の助動詞「べし」の連用形、接続は終止形(ラ変なら連体形)。㋜推量㋑意志㋕可能㋣当然㋱命令㋢適当のおよそ六つの意味がある

 

優れた人の説であるからといっても

なら=断定の助動詞「なり」の未然形、接続は体言・連体形

む=婉曲・仮定の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。ここでは微妙なところ。

からに=接続助詞、(逆接の仮定条件)~だからといって、たとえ~だとしても。(原因・理由)~のために

 

どうしても誤りなどないだろうか。(いや、あるに違いない。)

などか=副詞、疑問・反語、どうして~か。「などか」の「か」は係助詞、結びは連体形となる。係り結び。

なから=ク活用の形容詞「無し」の未然形

む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。係助詞「か」を受けて連体形となっている。

 

必ず正しくないことも混じらないではいられない

で=打消の接続助詞、接続は未然形。「ず(打消しの助動詞)+して(接続助詞)」→「で」となったもの。

え=副詞、下に打消の表現を伴って「~できない。」

ず=打消の助動詞「ず」の終止形、接続は未然形

 

たくさんの人の検討を経るにつれて

あまた(数多)=副詞、たくさん、大勢

まにまに=副詞、(物事が進むのに)~につれて、~とともに。(他人の意志・成り行き)~に任せて、~のままに。

 

つまらない行いである

言ふかいなし=つまらない、情けない、身分が低い、卑しい。言ってもかいがない、言っても仕方がない。「言ふ(ハ行四段動詞連体形)/甲斐(名詞)/無し(ク活用形容詞終止形)」

わざ=名詞、事の次第、こと。おこなひ、動作、しわざ、仕事。仏事、法事、法会

 

 

 解説・品詞分解はこちら玉勝間『師の説になづまざること』(1)解説・品詞分解

 

玉勝間『師の説になづまざること』まとめ

 

 

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